作家別作品集
桐野 夏生

まだ読み始めたばかりでこれから楽しみな作家です。

著者略歴
1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒。1993年、「顔に降りかかる雨」で第三九回江戸川乱歩賞受賞。1998年、「OUT」で第五一回日本推理作家協会賞受賞。一九九九年、「柔らかな頬」で第121回直木賞受賞

OUT(上下) ☆☆☆ 深夜の弁当工場で働く主婦たち。チームの中の1人の主婦がある夜夫を殺してしまう。こんな暮らしから抜け出したい。その思いが一人のばらばら死体を作り、完璧に近い処理をする。チームリーダー格になる雅子はもと金融機関の事務職。、自分の世界でしか生きられない夫と、反抗期の息子がいる。夫を亡くし寝たきりの姑と、娘と暮らす一本気のまじめなよしえ、夫のギャンブルと浮気に苦しめられながらもよい母であろうとする弥生、ブランド狂いで借金地獄に陥っている邦子。一人一人がとてもよく描けていて、単なるサスペンスではない。死体処理がビジネスになろうとしたとき、倒錯的な男佐竹が絡みはじめ、非常に、怖い展開になるが、最期まで面白く読めた。私は「柔らかな頬」よりこちらのほうがすきですね。
顔に降りかかる雨  ☆☆☆ 親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が、1億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は、暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は、成瀬と協力して解明に乗り出す。二転三転する事件の真相は?女流ハードボイルド作家誕生の’93年度江戸川乱歩賞受賞作!(出版社/著者の内容紹介から)
比較的凡庸です。でも面白かった。主人公の女性がどれもよく似たキャラクターなのが、気になりますが。
柔らかな頬 ☆☆☆ 現代の神隠し」と言われた謎の別荘地幼児失踪事件。姦通。誰にも言えない罪が初めにあった。娘の失踪は母親への罰なのか。直木賞受賞作(出版社/著者の内容紹介から)
下と同じ作者とはとうてい思えない。ガラス細工のような主人公の心、事件後の愛人の変貌の悲しさ。ガンで余命いくばくもない元刑事が振り絞る想像力のすさまじさ。読み応えがありました。これから読むのが楽しみな作家です。
魂萌え !  ☆☆☆ 夫の急死後、世間という荒波を漂流する60歳を目前にした主婦・敏子。夫が死んだ夜夫に女がいたことを知る。こんなはずじゃなかった息子夫婦、頼れない娘、いま隣のうちで起こっているような話だ。初めて夫の庇護を離れ一人で生きてゆかねばならない。これから先は喪失との戦いだ。さまざまな人間を通して成長する敏子。桐野 夏生のなかでは異質の作品。図書館にあれば借りて読む程度の内容だが、近い年代の私にとっては、世間知を得るうえでは面白かった。もしも夫に違う生活があったとしたら、考えただけでも腹立たしい、そういう疑似体験をすると言う意味でもまあお勧めですね。